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古今亭志ん朝/百年目

      2021/11/12

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あらすじ

ある大店の一番番頭・冶兵衛。
四十三だが、まだ独り身で店に居付き。
この年まで遊び一つしたことがない堅物で通っている。

二番番頭が茶屋遊びで午前さまになったのをとがめて、芸者という紗は何月に着るのか、タイコモチという餠は煮て食うか焼いて食うか教えてほしいと皮肉を言うほど、ある朝、小僧や手代にうるさく説教した後、番町のお屋敷をまわってくると外出した。
ところが、外で待っていたのは幇間(ほうかん=たいこもち)の一八(いっぱち)。

今日は、こっそり入り浸っている柳橋の芸者、幇間連中を引き連れて向島へ花見に繰り出そうという趣向。
菓子屋の二階で、とっておきの、大津絵を染めだした長襦袢(ながじゅばん)、結城縮みの着物と羽織に着替え、屋形船を出す。

小心な冶兵衛、すれ違うから舟から顔をのぞかれるとまずいので、ぴったり障子を締め切らせたほどだが、向島に着くと、酒が入って大胆になり、扇子を首に縛りつけて顔を隠し、長襦袢一枚で、桜が満開の向島土手で陽気に騒ぐ。
一方、こちらはだんな。
おたいこ医者・玄伯をお供に、これまた花見にやってきている。

玄伯老が冶兵衛を認めて、あれはお宅の番頭さんではと言っても、だんな、悪堅い番頭にあんな派手なまねはできないと、取り合わない。
そのうち、二人は土手の上で鉢合わせ。
避けようとするだんなに、冶兵衛は芸者と勘違いしてむしゃぶりつき、はずみでばったり顔が合った。
いちばんこわい相手に現場を見られ、冶兵衛は動転。

「お、お久しぶりでございます。ごぶさたを申し上げております。いつもお変わりなく……」
酔いもいっぺんで醒めた冶兵衛、逃げるように店に戻ると、風邪をひいたと寝込んでしまう。
あんな醜態をだんなに見られたからはクビは確実だと頭を抱えた冶兵衛、いっそ夜逃げしようかと、一晩悶々として、翌朝、帳場に座っても生きた心地がない。

そこへ、だんなのお呼び。
そらおいでなすったと、びくびくして母屋の敷居をまたぐと、意外にも、だんな、昨日のことはおくびにも出さず、天竺(てんじく)の栴檀(せんだん)の大木と南縁草という雑草の話を始める。

栴檀は南縁草を肥やしにして生き、南縁草は栴檀の下ろす露で繁殖する。
持ちつ持たれつで、家ではあたし、店ではおまえさんが栴檀で、若い者が南縁草。
南縁草が枯れれば栴檀のおまえも枯れ、あたしも同じだから、厳しいのはいいが、もう少しゆとりを持ってやりなさいと、やんわり諭す。
ところで、昨日は面白そうだったなと、いよいよきたから、冶兵衛、取引先のお供でしどろもどろで言いわけ。

だんなは少しも怒らず、金を使うときは、商いの切っ先が鈍るから、決して先方に使い負けてくれるなと、きっぱり言う。
実は、帳簿に穴が空いているのではと気になり、密かに調べたが、これぽっちも間違いはなかったと、冶兵衛を褒め

「自分でもうけて、自分が使う。おまえさんは器量人だ。約束通り来年はおまえさんに店を持ってもらう」
と言ってくれたので、冶兵衛は感激して泣きだす。

「それにしても、昨日『お久しぶりでございます』と言ったが、一つ家にいながらごぶさたてえのも……なぜあんなことを言ったんだい?」

「へえ、堅いと思われていましたのをあんなざまでお目にかかり、もう、これが百年目と思いました」

 

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 - 古今亭志ん朝

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