★古今亭志ん生(五代目)五人廻し
2022/08/03
関東の遊郭には「廻し」という制度がある。
一人の遊女が一度に複数の客の相手をするのであるが、遊女の嫌な客になると長時間待たされたり、ひどいのにはちょっとしか顔を見せない「三日月振り」とか、全く顔を見せない「空床」「しょいなげ」。
来てもすぐ寝る「居振り」などがあるので、客はたまらない。
しばしばもめ事が起こってしまう。
そんな客の苦情を一手に引き受けるのは、「若い者」「妓夫太郎」(ぎゅうたろう)と呼ばれる男性従業員である。
吉原のある遊郭、遊びは終わって、客と遊女が床にはいる大引け(午前2時ごろ)も過ぎたころ、若い者は、客たちからお目当ての遊女が来ないと文句を言われて四苦八苦である。
一人目の客からはさんざん毒づかれて、吉原の由来まで聞かされた揚句、
「ぐすぐすしてやがると、頭から塩かけてかじっちゃうぞっ!!」と一喝される。
「少々御待ちを願います。ええ、喜瀬川さんえ」と汗だくになって遊女を探しているが、二人目の客に「ちょいと廊下ご通行の君」と呼ばれる。
今度は薄気味悪い通人で、ねちねちと責められ、「君の体を花魁の名代として拙に貸し給え。」と迫られ、焼け火箸を背中に押しつけられそうになる。
ほうほうの態で逃げ出すと、三人目の客に捕まる。
権柄づくの役人で「小遣!給仕!」と呼ばれ、さんざん文句を並べて
「この勘定書きに、娼妓揚げ代とあるがね。オイ、こら何じゃ。相手が来んのに揚げ代が払えるか。法律違反じゃよ。」と責められる。
「へえ。お待ちくださいまし。」と逃げだせば、四人目の客が「若けえ衆さあん。若へえ衆さあん。ちょっくらコケコ!」と呼んでいる。
「鶏だね。どうも。・・・へい。何でげす。杢さんじゃありませんか。」見れば馴染みの田舎客である。
だが、この田舎客も前の三人と同じ苦情を並べたて
「ホントにホントにハア。ホントにイヤになりんこ。とろんこ。とんたらハア。トコトンヤレ、トロスク、トントコオ。オウワアイ!」
と意味不明の叫びをあげて若い者を呆れさせる。
そんな騒ぎをよそに遊女の喜瀬川はお大尽と遊んでいるが、若い者の知らせにお大尽の方が気にして
「おい。花魁。どうも困ったことじゃな。ワシが揚げ代を他の四人に渡してやるちゅうに、帰ってもらうべえ。」
「じゃあ、わちきにもお金をくんなまし。」
「お前に銭こ渡してどうする。ほれ。」
「ありがと。じゃ、このお金を主さんに上げますから、四人と一緒に帰ってくんなまし。」
[PR]
こちらの演目もどうぞ
関連記事
-
-
★古今亭志ん生(五代目)お直し【文部大臣賞に燦然と輝く郭噺】※解説付き
落語 古今亭志ん生 お直し 芸術祭 (文化庁) 芸術祭(げいじゅつさい、Nati …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)後生鰻
落語 「後生鰻」 古今亭志ん生 あらすじ さる大家の主人、すでにせがれに家督を譲 …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)抜け雀
あらすじ 小田原宿に現れた若い男。 色白で肥えているが、風体はというと、黒羽二重 …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)蒟蒻問答(こんにゃく問答)
落語「蒟蒻問答」 あらすじ 八王子在のある古寺は、長年住職のなり手がなく、荒れる …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)昭和43年(1968)7月3日~78歳の映像
この映像は、昭和43(1968)年7月3日に東京12チャンネル(現・テレビ東京) …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)天狗裁き
『天狗裁き』(てんぐさばき)は、古典落語の演目。元々は上方落語の演目の一つである …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)鈴振り(鈴まら)
1964年(昭和39年)10月31日「東宝名人会」東宝演芸場で収録/strong …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)三年目
三年目(さんねんめ)は古典落語(江戸落語)の演目の一つ。 4代橘家圓喬(たちばな …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)水屋の富
古今亭志ん生 水屋の富 落語 水屋の富(みずやのとみ)は古典落語の演目の一つ。 …
-
-
★古今亭志ん生(五代目)稽古屋
稽古屋(けいこや)は落語の演目の一つ。上方、東京とも同じ題である。 初代桂小文治 …
- PREV
- ★三遊亭圓楽(五代目)花見の仇討
- NEXT
- ★林家彦六(八代目 林家正蔵)毛氈芝居(もうせんしばい)