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三遊亭圓遊(四代目)古手買い(ふるてがい)

   

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「熊さん!」

「源さんか、入りなよ」

「驚いちゃった。おカミさんと食事をしていたら……」

「お前のところでは、自分のカミさんに『お』を付けるのかい」

「そうだよ。家では偉いんだもの。で、若い男が家の前を行ったり来たりしてるんだ。それを見たおカミさんが出て行って、戸の影でベチャベチャ喋ってんだ。それを聞いたら、おカミさんの弟なんだ」

「なんだ、弟か」

「家に上げて話を聞いたら、親父の金を使い込んで放り出され、伯父さんの家でも入れてもらえず、家は弟の姉だから面倒を見ることになったが、汚い物を着ているので、古着の木綿で寒いから綿入れを買うことになった。おカミさんが言うには『熊さんは買い物上手で親切だから一緒に行って貰いな、忙しくて行けないと言ったらおだてればオッチョコチョイだから……行ってくれるだろう』。熊さん連れてってくれるかぃ?」

「話はしっかりして欲しいな。で、なんて言ってた」

「熊さんはしっかり者で買い物が上手いと誉めていた」

「それから先言ってみろ」

「忙しくて行けないと言ったらおだてればオッチョコチョイだから……、あッ、これは内緒話だ」

「行ってあげるよ。八丁堀まで行こうか」

「何処でも良いよ。熊さん、こんちは忙しいとこスイマセンね」

「今頃おだてたってダメだよ。ネタバレしてるんだから」

「熊さん、買い物上手なのはおまじないをするのかぃ?」

「古着を買うときは呼吸があるんだ。ま、足元を見られないようにするんだ」

「では、何を履いて行くんだ」。

「例えば、お前が小紋の紋付きを買うとするな」

「いや、木綿の綿入れだ」

「仮にだ」

「仮だって、そんなにオアシを持っていないもの」

「向で見せられた物が、柄も紋も良いと言えば、10円のところ12~3円に言ってくる。古着という物はここで傷を付ける」

「ハサミでか?」

「けなすんだ。『柄はぼやけているし、紋は違う、でも冷やかしだと思われたくないから、幾らだ』と聞くと、10円の物が8円となる。ここで上下4~5円の違いが出る。分かるか?」

「小紋で紋付きだから安いのか」

「しょうが無いな」。

「ここの店は品物が沢山有るな。入るよ」

「いらっしゃいませ。どの様な物を……」

「木綿の洗いざらしで……綿入れだ」

「これは二子縞(フタゴジマ)の総裏で、丈夫でございます。綿(わた)も新しいのが入っています。こちらは河内木綿で丈夫
ですよ」。

「オイ、源さん、何してるんだ。着物が引きずってるよ」

「足元見られるから……」

「河内木綿で丈夫だってよ」

「小紋が寝ぼけている」

「オイオイ」

「紋が家のと違う」

「しょうが無いな。いくらだい」

「朝商いで縁起がよく、同業者が軒を並べておりますから、他の店を見てからでもよろしいのです。(ソロバンを入れる)こんなとこで如何でしょう?」

「ん、これだとよ。どうだ(ソロバンを渡す)。遠慮無しに玉を動かして良いよ。思いっ切り良いんだぜ」

「もう動かすとこが無いヤ」

「貸してみな。12万3千5百、バカ、分からないなら分からないと言え。こんなバカだとは思わなかったな」

「熊さん。分からないから熊さんに来て貰ったんじゃ無いか。良いよ、自分で買うよ」

「俺は知らないから……」

「私に売って下さい。この人より安く」

「ケンカしちゃ困ります。どなたさんでも同じですから」

「いくらだぃ。ソロバンに入れるからダメなんだ。口で言ってくれ」

「3円50銭です」

「安くしてくれ」

「充分お安くなっています」

「3銭にしておくれ」

「3銭って、負けるのですか」

「3銭にしておくれ」

「たったの……」

「立ったも座ったも」

「小僧、しまっておしまい。帰ってくださいよ。ヒマだと思って冷やかしに来るんだから。冷やかしにも程が有りますよ。3銭。3銭(キセルを吞みながらバカにしながら見つめる)。家は泥棒物を商っているんじゃ有りませんよ。アンタ顔を洗った?家に帰ったら塩酸で洗いなさい。お前さん、風の強いときは表に出ない方が良いな、パタッと倒れてしまうから。身体を切っても赤い血は出ないね、白いオカラがパラパラ出るね。お帰り。お帰りなさい。帰ったら井戸に3日も浸かって頭を冷やしたらどうだぃ」

「熊さん帰ろ」

「馬鹿な野郎も無いぜ。オイ、お前は番頭か?主人か?」

「番頭でございます」

「そうだろう。主人って器じゃ無いよ。ハナ入って来たのは誰だぃ」

「貴方です」

「そうだろう、俺だ。ここに居るのは、ソロバンを持たせればみんな動かす奴だ。こいつが気に入らないことを言ったからって、煙草をバクバク飲みやがって、こいつは良いよ、俺は一日中ここに突っ立っているのか。向こう先を見て言えよ。俺の言っていることが聞こえているのかよう。『塩酸で顔を洗え』と言ったな、金隠しじゃ無いんだ。お前を先に洗ってやろうか。『切っても血が出ない』……、切ってもらえ、血が出なかったらスイカじゃ無いが取り替えてやら~。俺が10年でも若かったら、上あごと下あごを持って、ピッっとヒッ裂いてやるんだが……。この盗人やろう~」

「盗人とはなんですか。私も言い過ぎたと思って黙って聞いていましたが、明日からここに座っていられません」

「立ってでも座ってでも好きにしろ。物を取るのが盗人と言うんじゃ無い、商売の道を外れた奴が商売盗人と言うんだ。今に拳固でツラをたたき腹の中にめり込ませるぞ。源さん、悔しくないのか、何か言ってやれ」。

「なんて言おう。オイ、古着屋さん」

「さんは要らね~」

「熊さんはしっかりしているんだ。刑務所まで行っているんだぞ」

「余計なこと言うな」

「ハナ入って来たのは俺だろう、こいつはソロバン持たせればみんな動かす奴だ」

「それはお前だろう」

「そうだ、間違えるな。商人なんてそんな物じゃ無いよ。たとえ、5銭の物を5円に付けられても」

「あべこべだよ」

「あべこべだよ。間違えるんじゃ無い。商人なんて、そんなものじゃ無いよ。ご無理ごもっともと言うのが商人の道だろう。道
が判らないの?交番で聞いて来な。俺が10年若かったら、上あごと下あごをブーっと引き裂いちゃうんだから」

「なんだかヘビみたいだな」

「まごまごしていたら、このゲンコツで頭バクッと殴ると、顔が腹の中に潜ると……、おヘソから覗くんだろう。覗いちゃイヤダよ」

「何言ってるんだぃ」

古手買いというお笑いでございました。

[出典:https://rakugonobutai.web.fc2.com/265furutegai/furutegai.html]

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