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柳家喬太郎/擬宝珠(ぎぼし)

      2020/10/27

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あらすじ

若旦那が病気になって寝込んでしまった。
熊さんは親に頼まれて、病気の原因、思い悩んでいる事を聞き出そうと若旦那の部屋にやって来た。

若旦那は気も消沈して寝込んでいた。なかなかその悩み事を口にしなかった。
でも、熊さんは落語通なので解った。女の子だったら「崇徳院」でしょ。

違っていたが、若旦那だから「幾代餅」でもないし、あ!、みかんが食べたい、でしょ。

徳ちゃん、熊ちゃんの仲であったのを思いだした。
小さな声で聞き取れないが「潮干狩りがしたい」でもないし「煮干しが食べたい」でもないし「擬宝珠が舐めたい」??

擬宝珠って何?

「擬宝珠って、お寺の屋根の上にあったり、橋の欄干の上にあるカネの丸いの、頭がとんがっているやつ。私は子どもの時から金物を舐めるのが好きだったんだ。食事に行ってもカレーを食べるだろ、カレーも好きだが、スプーンが舌に触った感触や味がたまらないんだ。それが高じて、擬宝珠が舐めたいんだ」。

「それだったら、近くの駒形橋、両国橋、永代橋が有るじゃないですか」

「それは、もう飽きた」

「ええ、もうやってんの」

「今舐めたいのは『金竜山浅草寺の五重塔』の一番上に付いている擬宝珠。でも、あれだけは夜行ったって舐められない。なめた~~い。舐められないなら、死んでしまうかも知れない」。

大旦那の所に戻って今の話をした。「擬宝珠が舐めたい」と。
驚く事か両親とも擬宝珠舐めが大好きであった。

駒形の擬宝珠はドジョウの味がしたし、京都の三条大橋は八つ橋の味がしたし、ハイカラだったのはニコライの擬宝珠。「擬宝珠でも浅草寺の五重塔の擬宝珠を舐めたい」のだと熊さんは注進した。

「そうかそうか、私たちもあれが舐めたかったが、息子に譲ろう。あれは擬宝珠とは言わず『宝珠』と言うんだが、そんなことより舐められるように手を打とう」。

浅草寺にお願いすると、多大なお布施と人命がかかっているので許可が下りた。足場を組んで最上階まで登れるようになった。

若旦那は信じられずに浅草寺までフラフラしながらやって来て、足場を見つけた。
それから後は信じられない程の力強さで屋根まで上がって擬宝珠(宝珠)をベロベロと舐めて、元気になって戻ってきた。

大旦那「私たちもあれが舐めたかった。で、どんな味がしたかい」

若旦那「タクアンの味がしました」

大旦那「タクアンの味?それで塩加減はどの位だった。五合位か一升位か?」

若旦那「いいえ、も~ちょっと塩辛かった」

大旦那「三升かそれとも五升か」

若旦那「いいえ、六升(緑青)の味がしました」。

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 - 柳家喬太郎

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