【落語チャンネル】ネット寄席

落語動画・音声まとめデータベース/世界に誇る日本の伝統芸能 落語ワールドをご堪能下さい

*

桂文枝(五代目)花色木綿

   

Sponsored Link

怪しい男がウロつきだしますというと、泥棒の始まりで。コソ泥、しかも、空き巣狙いちゅうやつ。

「お留守ですかぁ?用心が悪ぅおまっせ。留守なら、上げてもらいまっせ。」

と、入ってまいりましたのは、なんにも無い家。しかし、生活しているような、雰囲気はある。
柳行李がありますので、開けてみますと、新聞紙。洗濯もんやらなんやらで、盗るもん、いっこもあれへん。

不景気な家ですわ。無かったら無いで、そのまま帰ってしもたら、良かったんですけれども、
一旦入った家、なんにも盗らずに出るちゅうのも、盗人に入ったかいが無いというので、そこらウロウロ。

ここは、やもめの家でございまして、これが、風呂へ行ってる間の出来事。

「今、帰って来ました。えらい、すんまへん。」という声聞くなり、盗人も、逃げようといたしましたが、裏長屋のこと、一方口しかありません。台所の縁の下へ、コソコソっと、入ってしもた。

戸は、細目に開けといたはずやのに、閉まってる。
しかも、畳の上には、泥足の型が付いてる。柳行李が、引っくり返ってる。
こらどうも、盗人が入った様子。

しかし、盗るもんが無いので、逃げたような具合。
黙ってるわけにもいかんので、表へ出て、騒いでこましたろと。

「盗人が入ったぁ!」

近所じゅうは、大騒ぎ。
やもめの家に盗人が入った。騒いでおりますうちに、やもめが盗人に入りやがったやて。あべこべですがな。

とりあえず、家主さんに報告を。
しかし、一応、警察に、届けを出さないかん。何もかも盗られたちゅうのでね。
家主さんが、紙に書いて、提出することにいたします。

「まず、着類からいこ。」

「木類は、四分板が二枚に、五分板が一枚。」
って、その木違いますがな。着るもんですがな。

「綿入れが一枚」

「縞は?」

「淡路島」
って、何の縞ですねん。

「細かい線の入った柄ですねん。」

「千筋と。裏は、何を付けたん?」
て、分かれしまへんねやがな。

「裏は強いようにと、こういうものには、花色の木綿を付けるもんやがな。」

「そうそう、花色の木綿ですねん。」

「それから、何を盗られたん?」

「黒羽二重の袷が一枚」
エライ上等のもん、持ってはったんやね。

「こら何か、五つ紋か、三つ紋か?」

「おまへんねん」

「たいがい、紋付やけどなぁ。ほな、無紋やな。」

「いいえ、十文三分。」
て、足袋の文数違いまんがな。

「裏は?」

「花色の木綿でんねん」
紋付の裏に、木綿ちゅうのも、あんまり、聞けしまへんけどなあ。

「それから?」

「モーニングが一枚」

「一着と言いなはれ。これには、ちゃんと、紋が、おまんねんで。」
って、黒羽二重に紋がのうて、紋付のモーニングですて。始めは、黒羽二重に紋があって、モーニングと重ねてしもたったんで、その紋が、湿気で、モーニングに移ったて。んな、アホな。

「どんな紋や?」

「あっさりした紋でんねん。丸の中に、六角がおまんねん。その中に四角があって、またその中に、稲荷さんの鳥居があって、その下で、キツネとタヌキが相撲取ってる。」
ややこしい紋ですなあ。書けまへんで。

「裏は?」

「裏は、花色の木綿。」
って、これも、聞いたことない。

「それから?」

「布団が一枚」

「一流れと言いなはれ。表の柄は?」

「唐草」風呂敷やおまへんで。

「裏は花色の木綿」何でも、花色の木綿や。

「それから?」

「蚊帳(かや)が一枚」

「一張りと言いなはれ。五六か八六か?」

「弥七っつぁんで買いましてん。」
って、人の名前違いますがな。寸法ですがな。

「色は萌葱(もよぎ)で、裏は花色の木綿。」
裏付きの蚊帳ちぇなもん、見たことおまへんで。風通らへんし、暑うおっせ。暑い時分に、震えが来てしょうがないので、特別に、付けてもろたて。

「それから?」

「刀が一本」

「一振りと言いなはれ。短剣か長剣か?」

「ちょろけんで」
違いますがな、長い刀か、短い刀か。

「道中差しと。銘は、あるか?」

「姪は、おまへんけど、天下茶屋に、いとこが一人。」
その姪違いまっせ。

「無銘なりと」

「裏は花色の木綿」
って、刀に裏がありますかいな。刀の入ってた袋の裏ですて。

「表は?」

「表は八百屋」
長屋の表違いますがな。袋の表ですがな。

「表が更紗(さらさ)、裏が花色の木綿。」

アホが、口から、でまかせしゃべってたん。
ところが、一部始終を聞いておりましたのは、縁の下の盗人、何も盗ってないのに、“盗った盗った”言われるのんが、腹立ったとみえまして、そこへ飛び出してきよった。

「コラッ!おのれは!!」

「あんた、誰でんねん。」

「盗人じゃ」

「あんたが出て来たら、わたしゃこれ、面目ない。」

「さあ、逃げも隠れもせんぞ、片っ端から、かかって来い!俺が出て来たら、ガタガタ震えてるやつばっかりか。ここの裏のやつは、弱いやつばっかりやな。」

「裏が弱かったら、花色の木綿付けときなはれ。」

[出典:http://www.geocities.co.jp/Hollywood/2975/sub154.html]

Sponsored Link

 - 桂文枝(五代目)

[PR]

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

桂文枝(五代目)牛ほめ
桂文枝(五代目)夢浪花真田抜穴

真田の抜け穴 慶長19年(1614)の大坂冬の陣、徳川家康は天王寺の茶臼山に本陣 …

桂文枝(五代目)煮売屋

あらすじ 喜六と清八のコンビが、伊勢参りの途中でとある煮売屋(昔の簡易食堂)に立 …

桂文枝(五代目)軽業講釈

『軽業講釈』(かるわざ講釈)は上方落語の演目の一つ。 原話は不明。道中噺『伊勢参 …

桂文枝(五代目)喧嘩長屋

ある長屋で、夫婦原喧嘩が始まる。 これがとてつもない喧嘩で、長屋連中も巻き込んで …

桂文枝(五代目)孝行糖

主人公が褒賞金をもとに飴売りをする噺。 元は上方落語で、明治期に3代目三遊亭圓馬 …

桂文枝(五代目)足上り

足上がり(あしあがり)は上方落語の演目の一つ 「芝居噺」に属する。3代目桂米朝が …

桂文枝(五代目)こぶ弁慶

  お伊勢参りをすませた大阪の清八、喜六の気楽な二人連れが大津宿に着く …

桂文枝(五代目)蛸芝居

演目紹介 蛸芝居(たこしばい)は、上方落語の演目の一つ。主な演者には、6代目笑福 …