古今亭志ん生(五代目) 星野屋
2015/05/18
星野屋平蔵という金持ちのだんな。
近ごろ、水茶屋の女お花に入れあげ囲っていることを、女房付きのお京にかぎつけられてしまった。
お京は飯炊きの清蔵をうまく釣って囲い宅まで白状させたあげく、奥方をあおるので、焼き餠に火が付き騒動に。
平蔵は養子の身で、こうなると立場が弱い。やむなく、五十両の金をお花にやって手切れにすることを約束させられてしまう。
お花に因果を含めようとするが、女の方は
「だんなに捨てられたら生きている甲斐がない」
と、剃刀で自殺しようとする騒ぎ。困った平蔵、しばらく考えた末
「そんならおまえ、どうでも死ぬ気か。実はおれも今度悪いことがあって、お上のご用にならなけりゃならない。そうなれば家も離縁になり、とても生きてはいられない」
と意外な打ち明け話。それならいっそのことおまえと心中したいが、どうだ、いっしょに死んでくれるかと言われると、お花も嫌とは言えない。
母親に書き置きして、その夜二人が手に手を取って行く先は、身投げの名所・吾妻橋。だんなが先に飛び込むと、大川(墨田川)に浮かぶ屋根船から
「さりとは狭いご料簡、死んで花実が咲くかいなァ」
と一中節の「小春」のひとふしが聞こえてきて、お花、途端に死ぬのが嫌になってしまった。「もし、だんな、お気の毒。はい、さようなら」
ひどい奴があるもので、さっさと家に帰ってしまう。
そこへ鳶頭の忠七が現れ
「たった今、星野屋のだんなが血だらけで夢枕に立ち、『お花に殺されたから、これからあの女を取り殺す』と言いなすったので告げに来た」と脅かす。お花は恐ろしくなって、心中くずれの一件を白状してしまう。
忠七が「だんなを成仏させるには、てめえが尼になって詫びるほかねえ」と言うので、しかたなくみどりの黒髪をブッツリ切って渡したとたん、入ってきたのはほかならぬ星野屋平蔵。この心中は、お花の心底を試すための芝居だったのだ。
ちなみに平蔵は川育ちで、泳ぎは河童流。「ざまあ見やがれ。てめえともこれで縁切りだ。坊主になって当分見世へも出られやしめえ」
「おあいにく。かもじを切っただけさ」
「ちくしょう、だんな、ふてえ女でございます。やい、さっきてめえがもらった五十両はな、贋金だ。後ろに手が回るぜ」
お花がびっくりして返すと、
「まただまされやがったな。だんなが贋金を使うか。本物だい」
「えー、くやしい」
そばでお袋が
「あー、三枚くすねておいてよかった」
[出典:http://senjiyose.cocolog-nifty.com/fullface/2004/11/post_29.html]
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