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三遊亭金馬(三代目)金明竹

   

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金明竹(きんめいちく)は古典落語の演目の一つ。
骨董屋を舞台としたドタバタなやりとりを描く滑稽噺。
二部構成となっており、天然ボケの小僧が、来る客来る客に頓珍漢な断りをする前半部分は狂言の『骨川』、後半の上方弁の男による口上は初代林屋正蔵が天保5年(1834年)に自作の落語集「百歌撰」中に入れた「阿呆の口上」が元になっている。

あらすじ

骨董屋の叔父に世話になっている松公(名前は「与太郎」の場合も。
いずれにせよ、落語で言う「与太郎」型のキャラクターである)。
いささかおつむの足りない奴で、店の手伝いをさせてもかえって事をおかしくする始末。
面倒を見ている叔父さんは常にハラハラさせられている。

前半(珍問答)

ある日、松公が店番をしていると、不意に雨が降ってきて一人の男が雨宿りに寄ってくる。
男に「軒を貸してくれ」と言われ、「屋根の軒を持って行かれる!」と勘違いした松公、慌てて代わりに傘を貸してやった。

そのことを聞いた叔父さん、松公の勘違いとは思わず、親切と思って褒めるが、松公が貸したのが自分が買ったばかりの高級な蛇の目傘だと知ってあ然。
その上、相手の男が何処の誰かも分からない通りすがりと知ってあきれかえる。
「そういう時は、傘はみんな使い尽くして、バラバラになって使い物にならないから、焚き付けにするので物置へ放り込んであると断るんだ」叔父さんがお説教して奥へ引っ込むと、今度は向かいの家の人が「鼠が暴れて困るのでお宅の猫をお借りしたい」と言ってきた。

松公、「猫はバラバラなって使い物になりませんから焚き付けに……」後からそれを知った伯父(叔父?)さん、頭を抱えて叱る。
「猫なら『さかりがついてとんと家に帰らなかったが、久しぶりに戻ったと思ったら、腹をくだして、そそうがあってはならないから、マタタビを嘗めさして寝かしてある』と言うんだ」次にやってきたのは出入りのお店である大和屋の番頭さんで、「旦那様(叔父さん)に鑑定(骨董品の目利き)を依頼しに来た」という。

松公、「家にも旦那が一匹いましたが、さかりがついてとんと家に帰りませんで……」後からこれを聞いた叔父さん、びっくり仰天して大和屋にすっ飛んでいく。
「おじさんもわからない人だよな……」残された松公、問題の自覚はさっぱりない。

後半(上方男の口上)

そこへまた一人の男がやってきた。
上方者らしいが、開口一番、

「わて、中橋の加賀屋佐吉方から参じました。先度、仲買の弥市の取次ぎました道具七品のうち、祐乗、光乗、宗乗三作の三所物。並びに備前長船の則光、 四分一ごしらえ横谷宗岷小柄付きの脇差、柄前はな、旦那はんが古鉄刀木と言やはっとりましたが、やっぱりありゃ埋もれ木じゃそうにな、木ぃが違うておりまっさかいなあ、念のため、ちょっとお断り申します。次は、のんこの茶碗。黄檗山金明竹、ずんどうの花活け。古池や蛙飛び込む水の音と申します、あれは、風羅坊正筆の掛け物で。沢庵、木庵、隠元禅師はりまぜの小屏風、あの屏風はなあ、もし、わての旦那の檀那寺が、兵庫におましてな、この兵庫の坊主の好みまする屏風じゃによって、かようお伝え願います」

ここまで一息に用事の口上を述べ立てた。

松公は意味が分からず呆気にとられていたが、
「わーい、よくしゃべるなあ。もういっぺん言っておくれ」
上方者の使いも律儀な奴で、またも口上を述べ立てるが、何しろ相手は松公であるから、意味もわからず早口を面白がるだけ。

騒いでいるとようやくおかみさんがそれに気づき、松公の代わりに話を聞こうとするが、何しろ骨董符丁だらけの早口な上方弁、やはり何を言っているのかわからない。
結局同じ話を三回もさせられた上方者は、疲れてクタクタになって帰ってしまった。
気の毒な奴である。

おかみさんが首をひねっていると叔父さんが帰ってくる。
誰か来なかったかと訊かれ、さっきの『上方弁』の話をしようとするが、わからない人間に報告されて内容がわかる訳がない

「仲買の弥市が気がふれて、遊女が孝女で、掃除が好きで、千ゾや万ゾと遊んで、終いにずん胴斬りにしちゃったんです。小遣いがないから捕まらなくて、隠元豆に沢庵ばっかり食べて、いくら食べてものんこのしゃあ。それで備前の国に親船で行こうとしたら、兵庫へ着いちゃって、そこに坊さんがいて、周りに屏風を立てまわして、中で坊さんと寝たんです」

「色情狂か? 全然分からないな。どこか一か所でも、はっきり覚えているところは無いのか?」
「えーと…。確か、古池に飛び込んだとか」
「飛び込んだァ!? あいつには道具七品が預けてあるんだが、どうなった!?  誰か買ったのか?」

「いいえ、買わず(蛙)……」

道具七品

加賀屋と取引する品は、由来を子細に見るといずれも桁外れの貴重品ばかりである(現代風にたとえれば重要文化財級である)。
この様な物を扱う叔父さんや加賀屋は、骨董商としてはやり手と見ることができる。

祐乗、光乗、宗乗三作の三所物

祐乗は足利時代の金細工師で、後藤四郎兵衛家の初代。
光乗はその二代目でこれまた金細工の大家で織田信長に仕えた。
宗乗は四代目。
三所物(みところもん)は『目貫(めぬき)』・『小柄(こづか)』・『笄(こうがい)』の、脇差の付属品三点セットのこと。

備前長船の則光、四分一ごしらえ横谷宗珉小柄付きの脇差し

長船(おさふね)は、鎌倉時代の備前国の刀工・長船氏のこと。
則光は刀工の名。
横谷宗珉は江戸時代中期の金工で、絵画風彫金を考案した人物。
鉄刀木(たがやさん)はマメ科の広葉樹で、東南アジア原産の三大唐木の一つ。
「埋もれ木」は樹木の化石で、黒檀や紫檀の代用品としても用いられた。

のんこの茶碗

京都の楽焼の三代目である楽吉左衛門道入の焼いた茶碗のこと。
「のんこ」は正確には「のんこう」で、道入の号の一つ。

黄檗山金明竹、ずんどうの花活け

金明竹(キンメイモウソウ、Phyllostachys heteroclada f. bicolor)は中国原産の竹で、孟宗竹の変種。
黄金色で節の溝に緑色の縦筋が入っている。
ずんどうの花活けは、輪切りにした竹を使った花活け

風羅坊正筆の掛け物

「古池や蛙飛びこむ水の音」は芭蕉の発句。
『風羅坊』は芭蕉の雅号(ペンネーム)の一つ。
“正筆”と言うから本人の筆によるものであろう。
掛け物は掛け軸のこと。

沢庵、木庵、隠元禅師はりまぜの小屏風

3人はいずれも江戸時代前期の著名な禅僧。
沢庵は臨済宗の高僧。
隠元・木庵は中国から渡来し、共に黄檗山萬福寺住持を勤めた。
はりまぜの小屏風は、複数名の書いた書画を一つの屏風等に張り混ぜにしたもの。

前座のノルマ

「加賀屋佐吉方から来た男が話す口上」の部分は非常に難しく、噺家の口慣らしとして駆け出しの前座に課せられる基本中の基本ともいえるノルマの一つとなっており、この種の噺としては最初に『寿限無』を覚えさせられて、それがすらすらと暗唱できる様になったら少し難度を上げて『金明竹』というのがセオリーである。

かといって、真打が決して演らない噺と言うわけでもなく、過去には4代目橘家圓喬や3代目三遊亭圓馬が得意にしていた。
戦後は3代目三遊亭金馬が得意とし、立て板に水を流すような口上は絶品であった。
また、名古屋市出身の3代目三遊亭圓丈は大阪弁の口上をそっくり翻案した名古屋弁版、立川志らくが英語訛版を演じるほか、津軽弁や博多弁で演じる落語家もいる。

当代の林家正蔵は当時の落語協会で実施されていた真打昇進試験にこの噺を掛けて合格した。
だが、これらのエピソードの中でも特に驚嘆に値すべきは4代目圓喬の高座で、口上がうまいだけではなく、繰り返す際、3度とも並べる道具の順序を悉く変えて演じたと伝えられている。

いずれにしても、ただ単純に口上の面白おかしさで笑わせるだけではなく、落語家の記憶力や滑らかな滑舌という技量を披露するための噺という一面があり、口演の完成度が高ければ笑い以上に拍手という形での賞賛が得られる。
もっとも、落語家のほぼ全てが覚えさせられる基本中の基本とも言える噺で、また基本の噺自体はシンプルである。

それだけに、真打級がいざ高座に掛けるとなれば、円喬の様に観客はもとより同業者や後輩たちをも納得させるだけのより高い表現力やひねりが要求される事になる。
そういう意味で「(自分の金明竹は)高座でお客様にお見せできる様なものではございません」という真打も決して珍しいものではない。

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 - 三遊亭金馬(三代目)

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