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三遊亭円歌(二代目) 高野違い

   

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大家さんに歌を知らない者は人間ではないと言われ、憤慨して隠居のところに教えてもらいにやって来た。百人一首の本があるから見せると

「お公家さんが逆立ちであぐらして畳を持ち上げている・・・」

「それは本が逆さまだ。最初は天智天皇様だ」

「千住の天王さまか、それではやっちゃ場だね。坊主は蔵前の団子天王。散らし髪は品川のカッパ天王か」

「お祭りじゃないが、みんな歌詠みの名人だ」

「水溜まりを見ている、これは?」

「六玉川(むたまがわ)の一つ、高野の毒水で、空海上人は近所の人は呑まないが、知らない旅人が飲んではいけないと、『わすれても汲みやしつらむ旅人の高野(こうや)の奥の玉川の水』と詠んだ」

「この坊さんは?」

「僧正遍昭の『あまつ風雲のかよひぢ吹とぢよ乙女のすがたしばしとどめむ』」

「たばこ屋の乙女ちゃんは看板娘なんだ」

「十六七の女の子を乙女と言うな」

「今度は女が出てきた」

「それは素坊内侍だ」

「これは」

「赤染衛門。こちらは右近」

「赤があって、ウコンがあって、スオウが有れば、紺屋(こうや)がそろうかな」

「ここにいい女が居るな」

「石山寺の紫式部だ『めぐり逢てみしやそれ共わかぬまにくもがくれにし夜半のつきかな』だ。向こうに恋人が現れ、あすこに居るなと思っていたら、人混みに紛れてガッカリした歌だ」、「ガッカリしたのは大晦日の歌か」

何回も読み下し覚えた?これだけ覚えれば大家も驚くだろうと、駆け出した。

大家の家で大家に向かって百人一首は知っているかと啖呵を切った。子供だって知っているとバカにされて

「公家と坊主が水溜まりを見ているのを知っているか」

「そんなの無いよ。どんな歌なんだ」

「『わすれても・・・、 わすれても汲みやしつらむ旅人の』よ、それから『乙女のすがたしばしとどめむ』だ」

「歌が二つくっつていら~」、「出来立てだから・・・」

「それは、空海上人の『わすれても汲みやしつらむ旅人の高野(たかの)の奥の玉川の水』と言う有名な歌だ」

「高野(たかの)だって、それは高野(こうや)って言うんだ」

「そこは高野とかいて”こうや”と読むと仏説になるので、歌の道では”たかの”と読むんだ」

「よし、石山の姉さんを出そうか」

「お連れが有るんなら、入れなさい」

「連れじゃないんだ。『めぐり逢てみしやそれ共わかぬまにくもがくれにし夜半のつきかな』だ。どうだ、ドロボウ」

「ドロボウはないが、誰が詠んだ」

「それを忘れて成るものか。百人一首の中だ・・・。女だ・・・。赤でもなければ黄色でもなく・・・、えび茶式部だ」

「子供でも知っている石山寺の紫式部よ」

「紫と書いて、”えび茶”と読む。”むらさき”と読むと坊主臭いから嫌って・・・」

「紫とえび茶は色が違うワ」

「え?色が違う。せんの高野(紺屋)で違った」

[出典:http://ginjo.fc2web.com/226kouyatigai/kouyatigai.htm]

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