★立川談志/蜘蛛駕籠(蜘蛛駕篭・くもかご)
『住吉駕籠』(すみよしかご)または『蜘蛛駕籠』(くもかご)は古典落語の演目の一つ。
原話は、享保12年に出版された笑話本・「軽口初賣買」の一遍である『乗手の頓作』。
元々は上方落語の演目で、住吉大社が舞台である。明治時代に3代目柳家小さんが東京に持ち込んだ。
主な演者として、東京では5代目柳家小さんや三遊亭小遊三、上方では6代目笑福亭松鶴や3代目桂米朝などが得意としている。
あらすじ
かご屋を狂言回しとしたオムニバス形式となっており、江戸と上方では客の種類や行動が若干異なっている。
今回は江戸落語での演出に準拠。
導入部
夕暮れ時、鈴が森近くで客待ちしている雲助が二人。
稼ぎ時だというのに、なぜかこの籠だけなかなかなかなかお客が捕まらない。
と、いうのも、二人のうちの一人…この前入ったばかりの新米が、物凄い頓珍漢だったのだ。
ついさっきも、兄貴分が用を足しに行っている間にお客を捕まえ、籠に乗せたまではよかったのだが、この『客』というのがすぐ横にある茶店の主。
無理やり籠に押し込んで、「まごまごしてやがると、二度とここで商売させねえからそう思え」などと怒鳴られてしまった。
このことで兄貴分が説教しているうちに、周りの雲助はみんな客を捕まえていなくなってしまっていた…。
その一
最初にやってきたのは、身なりのしっかりしたお侍。
「お駕籠は二丁であるぞ」
「有難うございます!!」
前の駕籠がお姫さま、後ろの駕籠がお乳母様。…。
てっきり上客と思い、喜び勇んで仲間を呼びに行きかけたら
「そのような駕籠が通らなかったか」
その二
「高い山から 低い山見れば 高い山のほうが 如何したって高い♪」
次に来たのは酔っ払い。
ほうっておけという兄貴分の忠告を無視して、新米が声を掛けると早速絡まれてしまった。
「川崎の大師様におまいりに行って、帰りに船に乗ろうと六郷の渡しまで来ると、後ろから女の声で『あーら熊さん、あーら熊さん』って呼ぶじゃぁねえか。それが幼馴染の辰公んとこの女房で、彼女に誘われて幼馴染のところに遊びに行きご馳走になったんだ。で、帰りがけに船に乗ろうと六郷の渡しまで来ると、後ろから女の声で『あーら熊さん、あーら熊さん』って呼ぶじゃぁねえか。それが幼馴染の辰公んとこの女房で、彼女に誘われて幼馴染のところに遊びに行きご馳走になったんだ。で、帰りがけに…」
話が堂々巡りになってなかなか進まない。おまけに、何にも言っていないのに怒り出してしまい駕籠屋は閉口。
その三
次に来たのは威勢の良いあんちゃん。粋な姿で、踊りながらやってくる。
兄貴分が手本を見せてやるといい、お客のノリに合わせて「駕籠屋でござい!」
「駕籠屋 駕籠屋 お駕籠を持っといで♪」
しめたとばかりに運んでいくと
「駕籠屋 駕籠屋 乗ってやる代わりに駕籠屋も踊れ♪」
踊ればご祝儀がもらえると思い、お客の音頭にあわせて踊りだす。
しばらく踊っているうちに暗くなってきたので
「旦那 旦那 そろそろお駕籠に 乗ったらどうでしょ?」
「ウーン こりゃ 乗りたいけど 銭がない!!」
兄貴分怒って「張り倒せ! この野郎!!」
その四
『何でへんな客ばかりが来るんだよ』と文句を言っていると、置きっぱなしにしていた駕籠の中から声がする。
「品川までやってくれ」
一分のところを二分くれると言い、しかも天保銭一枚別にくれるという太っ腹な客に感動した駕籠屋。
早速駕籠を担ぐが…重い。持ち上がらない。それでも何とか担ぎ上げ、ヨロヨロと歩き出した。
実はこの駕籠、中に二人乗っていたのだ。
江戸に帰るのに話をしながら行きたいが、歩くのは面倒と、駕籠屋をペテンに掛けたというわけ。
最初は静かに乗っていたが、やがて興が乗って相撲の話になり、とうとうドタンバタンと取っ組み合いを始めたからたまらない。
たちまち底が抜け、駕籠がすっと軽くなった。
変だなと思い、簾をめくるとやっぱり二人。
下りてくれと文句を言うと、「江戸に着いたらなんとでもしてやるから。修繕代は出すからこのままやれ」。
担げませんというと「オレたちも中でかついで歩くから」。
こうして、世にも不思議な珍道中が出現した。
これを見ていた街道筋の子供が
「おとっつぁん、へんな駕籠が来たよ! 駕籠屋の足が四本、かごの中から足が四本。あの駕籠なに!?」
「うーん、あれが本当のクモ駕籠だ」
演題の由来
『クモ駕籠』とは本来、雲助の駕籠の意味で『雲駕籠』とも書いた。
そのいわれは、雲のように居所が定まらないからとも、蜘蛛のように網を張って客をつかまえるからとも言われている。
この「雲」と、虫の「蜘蛛」とを引っ掛けてタイトルがついたという。
[PR]
こちらの演目もどうぞ
関連記事
-
-
★立川談志/蜀山人(しょくさんじん)
蜀山人こと大田 南畝 大田 南畝(おおた なんぽ、寛延2年3月3日(1749年4 …
-
-
★立川談志/馬の田楽(うまのでんがく)
1968年(昭和43年)4月:録音 あらすじ 頼まれた味噌の荷を馬に積んで三州屋 …
-
-
★立川談志/やかん(薬缶)
★聴き比べ ⇒ 三遊亭金馬(五代目)やかん ⇒ 三遊亭圓生(六代目)やかん & …
-
-
★立川談志/火事息子
あらすじ 江戸の町。神田にある質屋の大店「伊勢屋」の若旦那は子供の頃からどういう …
-
-
★立川談志/二番煎じ
あらすじ 冬になると火事が多い江戸のこと、夜回りをしようということになり、旦那衆 …
-
-
★立川談志/権助提灯
【落語】立川談志 権助提灯
-
-
★立川談志/持参金・五貫裁き
持参金(じさんきん)は、落語の演目の一つ。落語によくある、結婚がらみの話ではある …
- PREV
- ★三遊亭圓生(六代目)洒落小町
- NEXT
- ★三遊亭圓生(六代目)お化け長屋