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■柳家小さん(五代目) 猫の災難

      2014/06/09

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文無しの熊五郎。
朝湯から帰って一杯やりたいと思っても、先立つものがない。
のみてえ、のみてえとうなっているところに、隣のかみさんが声をかけた。
見ると、大きな鯛の頭と尻尾を抱えている。

猫の病気見舞いにもらって、身を食べさせた残りだという。
捨てに行くというので、頭は眼肉がうまいんだから、あっしにくださいともらい受ける。
これで肴はできたが、肝心なのは酒。

猫がもう一度見舞いに酒をもらってくれねえかとぼやいていると、ちょうど訪ねてきたのだ兄貴分。
おめえと一杯やりたいと誘いに来た、という。

サシでゆっくりのむことにしたが、何か肴が……と見回し、鯛の頭を発見した兄貴分、台所のすり鉢をかぶせてあるので、真ん中があると勘違い。
こんないいのがあるのなら、おれが酒を買ってくるからと大喜び。
近くの酒屋は二軒とも借りがあるので、二丁先まで行って、五合買ってきてもらうことにした。

さあ困ったのは熊。
いまさら猫のお余りとは言いにくい。
しかたがないので、兄貴分が酒を抱えて帰ると、おろした身を隣の猫がくわえていったとごまかす。

「それにしても、まだ片身残ってんだろ」

「それなんだ。ずうずうしいもんで、片身口へくわえるだろ、爪でひょいと引っかけると小脇ィ抱えて」

「何?」

「いや、肩へぴょいと」

日ごろ隣には世話になってるんで、我慢してくれと言われ、兄貴分、不承不承代わりの鯛を探しに行った。
熊、ほっと安心して、酒を見るともうたまらない。
冷のまま湯飲み茶碗で早速一杯。

どうせあいつは一合上戸で、たいしてのまないから、とたかをくくって、いい酒だ、うめえうめえと一杯また一杯。
これは野郎に取っといてやるかと、燗徳利に移そうとした途端にこぼしてしまう。
もったいないと畳をチュウチュウ。
気がつくと、もう燗徳利一本分しか残っていない。

やっぱり隣の猫にかぶせるしかないと
「猫がまた来たから、追いかけたら座敷の中を逃げ回って、逃げるときに一升瓶を後足で引っかけて、全部こぼしちまった」
と言いわけすることに決めた。

そう決まればこれっぱかり残しとくことはねえと、熊、ひどいもので残りの一合もグイーッ。
とうとう残らずのんでしまった。
いい心持で小唄をうなっているうち、

「こりゃいけねえ。猫を追っかけてる格好をしなきゃ」と、向こう鉢巻に出刃包丁、
「あの猫の野郎、とっつかめえてたたっ殺して」と一人でがなってると、待ちくたびれてそのまま白川夜船。

一方、鯛をようやく見つけて帰った兄弟分。
酒が一滴もないのを知って仰天。
猫のしわざだと言っても今度はダメ。

「この野郎、酔っぱらってやがんな。てめえがのんじゃったんだろ」
「こぼれたのを吸っただけだよ」
「よーし、おれが隣ィどなり込んで、猫に食うもの食わせねえからこうなるんだって文句を言ってやる」

そこへ隣のかみさんが
「ちょいと熊さん、いい加減にしとくれ。さっきから聞いてりゃ、隣の猫隣の猫って。家の猫は病気なんだよ。お見舞いの残りの鯛の頭を、おまえさんにやったんじゃないか」
これで全部バレた。

「この野郎、どうもようすがおかしいと思った。やい、おれを隣に行かせて、どうしようってえんだ」

「だから、猫によく詫びをしてくんねえ」

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