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■柳家小さん(五代目) 湯屋番

      2014/06/09

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道楽の末、勘当中の若だんな、出入りの大工・熊五郎宅の二階に居候の身。
お決まりでかみさんがいい顔をしない。
飯も、お櫃を濡れしゃもじでペタペタたたき、平たくなった上っ面をすっと削ぐから、中ががらんどう。

亭主の熊は、ゴロゴロしていてもしかたがないから、奉公してみたらどうですと言い出した。
ちょうど友達の鉄五郎が、日本橋槇町で奴湯という銭湯をやっていて、奉公人を募集中だという。

若だんな、途端に身を乗り出し、

「女湯もあるかい」

「そりゃあります」

「へへ、行こうよ」

紹介状を書いてもらい、湯屋にやってきた若だんな、いきなり女湯へ飛び込み

「こんちわァ」

度肝を抜かれた主人が、まあ初めは外廻りでもと言うと、札束を懐に温泉廻りする料簡。

木屑拾いとわかると
「色っぽくねえな。汚な車を引いて汚な半纏汚な股引き、歌右衛門のやらねえ役だ」
それじゃ煙突掃除しかないと言うと
「煙突小僧煤之助なんて、海老蔵のやらねえ役だ」と、これも拒否。

狙いは一つだけ。
強引に頼み込んで、主人が昼飯に行く間、待望の番台へ。
ところが当て外れで女湯はガラガラ。
見たくもない男湯ばかりウジャウジャいる。
鯨のように湯を吹いているかと思えば、こっちの野郎は汚いケツで、おまけに毛がびっしり。

どれも、いっそ湯船に放り込み、炭酸でゆでたくなるようなのばかり。
戸を釘付けにして、男を入れるのよそう、と番台で、現実逃避の空想にふけりはじめる。

女湯にやってきたあだな芸者が連れの女中に
「ごらん。ちょいと乙な番頭さんだね」と話すのが発端。

お世辞に糠袋の一つも出すと「ぜひお遊びに」とくりゃあしめたもの。

家の前を知らずに通ると女中が見つけ、
「姐さん、お湯屋の番頭さんですよ」
呼ぶと女は泳ぐように出てくる。

「お上がりあそばして。今日はお休みなんでしょ」

「へい。釜が損じて早仕舞い」じゃ色っぽくないから、「墓参りに」がいい。

「お若いのに感心なこと。まあいいじゃありませんか」
「いえ困ります」番台で自分の手を引っ張っている。

盃のやりとりになり、女が「今のお盃、ゆすいでなかったの」と、すごいセリフ。
じっとにらむ目の色っぽさ。

「うわーい、弱った」
「おい、あの野郎、てめえのおでこたたいてるよ」
そのうち外はやらずの雨。

女は蚊帳をつらせて「こっちへお入んなさいな」ほどよくピカッ、ゴロゴロとくると、女は癪を起こして気を失う。
盃洗の水を口移し。

女がぱっちり目を開いて「今のはうそ」ここで芝居がかり。

「雷さまは恐けれど、あたしのためには結ぶの神」
「ヤ、そんなら今のは空癪か」
「うれしゅうござんす、番頭さん」
ここでいきなりポカポカポカ。

「何がうれしゅうござんすだい。馬鹿、間抜け。おらァけえるんだ。下駄を出せ」
犬でもくわえていったか、下駄がない。

「そっちの本柾のをお履きなさい」
「こりゃ、てめえの下駄か?」
「いえ、中のお客ので」
「よせやい。出てきたら文句ゥ言うだろう」
「いいですよ。順々に履かせて、一番おしまいは裸足で帰します」

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