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■桂文楽(八代目) 心眼

      2014/02/01

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横浜から顔色を変えて梅喜(ばいき)が歩いて帰ってきた。聞くと弟に「穀潰しの、ど盲」と何回も言われたという。

それが悔しくて翌日自宅の馬道から茅場町の薬師様へ「どうか、目が明きます様に」と、願掛けに通った。
女房お竹の優しい取りなしもあって、満願の日、願い叶って目が明いた。

その時薬師様のお堂の上で声を掛けられた、馬道の上総屋さんの顔も分からない。
目が明くと道も分からないので、上総屋さんに手を引いてもらった。
目の前を人力車が横切った。びっくリして眺めているとお客は綺麗な芸者だった。

お竹と比べるとどっちが綺麗ですかと尋ねると、本人を目の前にしては失礼だが、東京で何番目という化け物の方に近いが、心だては東京はおろか日本中でも指を折るほどの貞女だ。
似たもの夫婦の逆で、梅喜はいい男だがお竹さんはマズイ女だ。

芸者の小春も役者よりお前の方がいい男だと言ってたぐらいだと、聞かされた。
浅草仲見世を通り、観音様でお詣りしていると、上総屋さんとはぐれてしまった。

お客の芸者小春が梅喜を見つけて、食事にと富士下の待合いに誘った。
上総屋の知らせで観音堂に目が明いた梅喜が居ると知らされ喜んで来てみると、二人連れが待合いに入る所を見た。

中の二人は酒に任せて、化け物女房は放り出すから、一緒になろうと相談していると、お竹が踏み込んで、梅喜の胸ぐらを締め上げた。

「勘弁してくれ、苦しい。お竹、俺が悪い。うぅ~」

「梅喜さん、どうしたの?」うなされていたので梅喜を揺り起こした。夢であった。

「一生懸命信心してね」

「あ~ぁ、もう信心はやめた」

「昨日まで思い詰めた信心を、どうしてよす気になったの」

「盲というものは妙なものだね、寝ている内だけ良~く見える」

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