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■立川談春 紺屋高尾

      2014/09/07

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紺屋高尾(こうやたかお)は、古典落語、浪曲の演目の一つである。
数多く日本の時代劇映画の題材となった。

花魁の最高位である高尾太夫と、一介の紺屋の職人との純愛をテーマに据えた名品。
モデルとなったのは、五代目の高尾-通称『紺屋高尾』『駄染高尾』にまつわるエピソードで、この高尾の記録から舞台は宝永年間から正徳年間に掛けての江戸であることが推測することができる。

主な演者は、落語家で4代目柳亭左楽、6代目三遊亭圓生、7代目立川談志、立川志の輔など、浪曲師では篠田実が得意とした。

あらすじ

神田にある紺屋に勤めている染物職人、久蔵。
11の年から親方に奉公して、26となった今でも遊び一つ知らず、まじめ一途に働く好青年だ。
その久蔵が、なぜか三日前から患って寝込んでしまっている。
心配になった親方の六兵衛が尋ねてみると、返ってきた答えはなんと「お医者様でも、草津の湯でも…」。
「恋わずらいか!?」親方仰天。
詳しく話を聞いてみると、三日ほど前に友達づきあいで吉原に行き、話の種だからと「花魁道中」を初めて目にしたという。
その時目にした高尾太夫のこの世のものとも思えない美しさに魂を奪われ、それから何を見ても高尾に見えるようになってしまった。
あんな美人と一晩語り明かしてみたいが、相手は「大名道具」と言われる松の位の太夫、とても無理だ…と、帰ってきたとたんにがっくり来て、寝込んでしまったのだというのだ。

唖然とした親方だったが「このまじめ一徹の男に、面と向かって『駄目だ』というとかえって変になってしまう。
ここはひとつ、久蔵の願いをかなえてやろう」と思い直して、「いくら太夫でも売り物買い物だろ? 俺に任せておけば会わせてやる」。
さすがに最高位の花魁だけあって、高尾を座敷に呼ぶのにはどう少なく見積もっても十両はかかる。
久蔵の給金の三年分だ。
しかし、それを聞くと希望が出たのか、久蔵はにわかに元気になった。
それから三年というもの、久蔵は一心不乱に働いて、入ってくるお金はすべて貯金に回した。

その結果、三年たったころには彼の貯金は十両を通り越し、十三両近くにもなっていた。
このお金を持って、遊びに行ければいいのだが、何せ相手は最高位。
突然乗り込んでいっても会えるわけがない。
そこで、親方の発案でお玉が池の竹内蘭石という医者を案内役に仕立てることにした。
この先生、腕の方はアヤフヤだが、遊び込んでいてなかなか粋な人物。

早速呼んで教えを請うと、予想通りいろいろとアドバイスをしてくれる。
「いくらお金を積んでも、紺屋職人では高尾が相手にしてくれません。
そこで、久蔵さんを流山のお大尽(金持ち)に仕立てて、私がその取り巻きということで一芝居打ちましょう。
下手なことを口走ると紺屋がバレるから、何を言われても『あいよ、あいよ』で通してください」。

帯や羽織もみな親方にそろえてもらい、すっかりにわか大尽ができあがった。
先生のおかげで無事に吉原に到着し、高尾に会いたいと申し出るとなんと高尾が空いていた!しかも、高尾自身も「大名のお相手ばかりで疲れるから、たまにはそんな方のお相手がしてみたい」と言っているんだとか…。

さて、三浦屋。
久蔵が高尾の部屋でドギマギしていると高尾太夫がしずしずと登場。
少し斜めに構えて、煙管で煙草を一服つけると「お大尽、一服のみなんし」。
松の位の決まりとして、初会では客に肌身は許さないから今日はこれで終わり。

花魁が型通り「今度はいつ来てくんなます」と訊ねると、感極まった久蔵は泣き出してしまった。
「ここに来るのに三年、必死になってお金を貯めました。
今度といったらまた三年後。
その間に、あなたが身請けでもされたら二度と会うことができません。
ですから、これが今生の別れです…」。

大泣きした挙句、自分の素性や経緯を洗いざらいしゃべってしまった。
流石は最高位の花魁。
高尾の方も、久蔵の指先を見てそのうそに気がついていたらしい。

怒られるかと思いきや、高尾はなぜか涙ぐんだ。
「源・平・藤・橘の四姓の人と、お金で枕を交わす卑しい身を、三年も思い詰めてくれるとは、なんと情けのある人…」。
自分は来年の三月十五日に年季が明けるから、その時女房にしてくんなますかと言われ、久蔵、感激のあまり泣きだした。

お金をそっくり返され、夢うつのまま神田に帰ってきた久蔵は、それから前にも増して物凄いペースで働き出した。
「来年の三月十五日…あの高尾がお嫁さんにやってくる」、それだけを信じて。
「花魁の言葉なんか信じるな」なんていう仲間の苦言も何のその、執念で働き通していよいよ「来年の三月十五日」…。

本当に高尾がやってきた。
久蔵、「ウーン…」と失神。
その後、久蔵と高尾が親方の夫婦養子になって跡を継ぎ、夫婦そろって何とか店を繁盛させたいと、手拭いの早染め(駄染め)というのを考案する。
その速さと粋な色合いがブームとなり、通称「かめのぞき」と呼ばれるようになった久蔵の店は大繁盛することになった。
「紺屋高尾」の由来話。

概要

花魁のラブストーリー
落語に出てく女郎と言えば、「三枚起請」「五人廻し」「お見立て」の喜瀬川、「品川心中」のお染、また厳密に言えば女郎ではないが、「星野屋」のお花など、男を手玉に取り、とんでもない目にあわせる文字通りの「傾城」であることがお約束となっている。
そんな中、落語に登場する代々の高尾太夫は情に厚く、純粋な心を持った美女として描かれることが多い。
この物語のほかにも、操を立てた相手を思うあまり、身請けした相手(伊達綱宗・伊達騒動を起こした張本人)になびかず斬り殺された「仙台高尾」(二代目・「反魂香」に登場)など、落語の高尾には誠実な女性が多い。

遊女の階級
『花魁』は吉原独特の階級制度で、五つある女郎の階級のうち、上から二つ(太夫と格子)を合わせ、部屋持ち女郎の意味で花魁と呼んでいた。
当然、ほかの場所(品川など)で女郎を買っても花魁は出てこない。
ただし、宝暦年間にもなると流石に花魁のグレードも下落し、太夫を買っても変なのがやってきたりしていた(三枚起請の喜瀬川がいい例)ようだ。

「かめのぞき」の由来
夫婦となって店を開いた久蔵と高尾が、商売繁盛のために考案したのが手拭いの早染め(駄染め)と言うもの。
浅黄色のこの染物は、吉原に繰り出す酔狂の間で大流行したと言われている。
「かめのぞき」と言うネーミングであるが、その由来は「高尾が店に出て、藍瓶をまたいで染めるのを見ていた客が、高尾が下を向いていて顔が見えないので争って瓶の中をのぞき込んだ」というエピソードにちなんでつけられたと言われている。

後日談
さて、この日も与三という男が高尾見たさに久蔵の染物屋に繰り出そうとするが、染めてもらう物がないため通りかかった黒猫を捕まえて染めてもらおうと思いつく。
見ていた奴が
「その猫、黒猫だぞ? どうやって染めるんだ?」
「なに、色揚げ(色の褪めた布を染め直す)してくるんだ」

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