■八代目 橘家圓蔵(月の家圓鏡) ねずみ穴(鼠穴)
2014/06/22
あらすじ
酒と女に身を持ち崩した百姓の竹次郎。
おやじに譲られた田地田畑もみんな人手に渡った。
しかたなく、江戸へ出て商売で成功している兄のところへ尋ね、奉公させてくれと頼むが、兄はそれより自分で商売してみろと励まし、元手を貸してくれる。
竹次郎は喜び、帰り道で包みを開くと、たったの三文。
馬鹿にしやがってと頭に血が昇ったが、ふと気が変わり、地べたを掘っても三文は出てこないと思い直して、これで藁のさんだらぼっちを買い集め、ほどいて小銭をくくる「さし」をこしらえ、売りさばいた金で空俵を買って草鞋を作る、という具合に一心不乱に働く。
その甲斐あって二年半で十両ため、女房も貰って女の子もでき、ついに十年後には浅草蛤町に蔵が三戸前ある立派な店の主人におさまった。
ある風の強い日、番頭に火が出たら必ず蔵の目塗りをするように言いつけ、竹次郎が出かけたのはあの兄の店。
十年前に借りた三文と、別に「利息」として二両を返し、礼を述べると、兄は喜んで酒を出し、あの時におまえに五両、十両の金を貸すのはわけなかったが、そうすれば景気付けに酒をのんでしまいかねない。
だからわざと三文貸し、それを一分にでもしてきたら、今度は五十両でも貸してやろうと思ったと、本心を語る。
さぞ恨んだだろうが勘弁しろと詫びられたので、竹次郎も泣いて感謝する。
店のことが心配になり、帰ろうとすると兄は、積もる話をしたいから泊まっていけ、もしおめえの家が焼けたら、自分の身代を全部譲ってやるとまで言ってくれたので、竹次郎も言葉に甘えることにした。
深夜半鐘が鳴り、蛤町方向が火事という知らせ。
竹次郎がかけつけるとすでに遅く、蔵の鼠穴から火が入り、店は丸焼け。
わずかに持ち出したかみさんのへそくりを元手に、掛け小屋で商売してみたがうまく行かず、親子三人裏長屋住まいの身となった。
悪いことにはかみさんが心労で寝付き、どうにもならず、娘のお芳を連れて兄に五十両借りにいく。
ところが「元の身代ならともかく、今のおめえに五十両なんてとんでもねえ」と、けんもほろろ。
店が焼けたら身代を譲ると言ったとしても、それは酒の上の冗談だと突っぱねられる。
「お芳、よく顔を見ておけ、これがおめえのたった一人のおじさんだ。人でねえ、鬼だ。おぼえていなせえッ」
親子でとぼとぼ帰る道すがら、七つのお芳が、あたしがお女郎さんになってお金をこしらえるとけなげに言ったので、泣く泣く娘を吉原のかむろに売り、二十両の金を得るが、その帰りに大切な金をすられてしまった。
絶望した竹次郎、首をくくろうと念仏を唱え、乗っていた石をぽんとけると、そのとたんに「竹、おい、起きろ」気がつくと兄の家。
酔いつぶれて夢を見ていたらしいとわかり、竹次郎、胸をなでおろす。
「ふんふん、えれえ夢を見やがったな。しかし竹、火事の夢は焼けほこるというから、来年、われの家はでかくなるぞ」
「ありがてえ、おらあ、あんまり鼠穴ァ気にしたで」
「ははは、夢は土蔵(=五臓)の疲れだ」
主な演者
上方落語から3代目三遊亭圓馬を経て東京の6代目三遊亭圓生へ伝わった。
6代目三遊亭圓生が再構成した上に、1953年末に第4次落語研究会で口演して高い評価を得た。
近年では7代目立川談志が得意とし、他にも10代目柳家小三治や上方の4代目桂福團治等が演じる。
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