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立川談志 初音の鼓

   

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あらすじ

骨董好きの殿さまのところに、出入りの道具屋・金兵衛が怪しげな鼓を売り込みに来る。
側用人の三太夫に、これは下駄の歯入れ屋の爺さんが雨乞いに使っていた鼓で、
通称「初音の鼓」というが、その爺さんが今度娘夫婦に引き取られて廃業するので形見にもらったと説明。

これを殿さまに百両でお買い上げ願いたいと言うから、三太夫あきれた。
なにしろこの男、この間も真っ黒けの天ぷら屋の看板を、慶長ごろの額と称して、三十両で売りつけたという「実績」の持ち主。
金兵衛、殿さまの身になれば、「狐忠信」の芝居で名高い「初音の鼓」が百両で手に入れば安いもので、一度買って蔵にしまってしまえば、生涯本物で通ると平然。

「もし殿が、本物の証拠があるかと言われたらどうする?」
「この鼓を殿さまがお調べになりますと、その音を慕って狐がお側の方に必ず乗り移り、泣き声を発します、とこう申し上げます」
「乗り移るかい?」
「殿さまがそこでポンとやったら、あなたがコンと鳴きゃ造作もないことで」

三太夫、仮にも武士に狐の鳴きまねをさせようとは、と怒ったが、結局、一鳴き一両で買収工作がまとまる。
殿さまポンの、三太夫コンで一両。ポンポンのコンコンで二両というわけ。
早速、金兵衛を御前に召し連れる。話を聞いた殿さまが鼓を手にとって「ポン」とたたくと、側で三太夫が「コン」

「これこれ、そちはただ今こんと申したが、いかがいたした」
「はあ、前後忘却を致しまして、一向にわきまえません」
「ポンポン」
「コンコン」
「また鳴いたぞ」
「前後忘却つかまつりまして、一向に」
「ポンポンポン」
「コンコンコン」
「ポンポン」
「コンコンコンコン」
「これ、鼓はとうにやめておる」
「はずみがつきました」

「次の間で休息せよ」
というので、二人が対策会議。
いくつ鳴いたか忘れたので、結局、折半の五十両ずつに決めたが、三太夫、鳴き疲れて眠ってしまい、ゆすっても起きない。
そこへ殿さまのお呼び出し。
一人で御前へ通ると、殿さまが
「今度はそちが調べてみい」

さあ困ったが、今さらどうしようもない。
どうなるものかと金兵衛が
「ポン」とたたくと、殿さまが
「コン」
「殿さま、ただ今お鳴きに」
「何であるか、前後忘却して覚えがない」
「ありがとうさまで。ポンポンポン、スコポンポン」
「コンコンコン、スココンコン」
「ポンポン」
「コンコン……。ああ、もうよい。本物に相違ない。金子をとらすぞ」
「へい、ありがとうさまで」

金包みを手に取ると、えらく軽い。

「心配するな。三太夫の五十両と、今、身が鳴いたのをさっ引いてある」

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