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古今亭右朝 辰巳の辻占(たつみのつじうら)

      2014/05/27

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1989年4月 池袋演芸場

『辻占茶屋』(つじうらぢゃや)または『辰巳の辻占』(たつみのつじうら)は落語の演目の一つ。
原話は、上方の初代露の五郎兵衛が宝永2年(1705年)に出版した笑話本・『露休置土産』の一遍である「心中の大筈者」。
元々は『辻占茶屋』という上方落語で、明治初期に東京へ移植された。
主な演者に東京の4代目橘家圓喬、3代目桂三木助や10代目金原亭馬生、上方の5代目桂文枝などがいる。

あらすじ

『恋』というものは、どうも人を盲目にするらしい。
この伊之助という男も、せっかく無尽で当てた大金を、全部『辰巳の遊郭にいる紅梅という女郎に捧げる』と大騒ぎをしていた。
彼の母親から、何とか説得してくれと頼まれた叔父さんは、伊之助を改心させるべく彼を呼び出した。
「大体、その女郎のどこが良いんだ?」
「全てですよ、スベテ! 叔父さんにも今度紹介しましょうか?」
話にならない。叔父さん自身も似たような『経験』があるため、ただ文句を言っても逆効果なのはよく解る。そこで…?
「そんなに惚れているなら、ひとつ賭けをしてみないか?」
「カケ?」
翌日、伊之助がいやに深刻な顔で見世に現れた。
「紅梅を呼んでくれ…」
幽霊みたいな顔で女将にそう言い、二階に上がった伊之助は、部屋にあった辻占菓子で暇つぶしを始めた。
「まず一つ…。何々、『富士の山よりお金を貯めて』、威勢が良いねぇ。『端からチビチビ使いたい』、何だよ…?」
他にもいろいろ引いてみるか、どれも物騒な内容のものばかり。ブツブツと文句を言っていると、そこへ紅梅がやってきた。
「如何したの?」
「アハハハ…。親の金を使い込んだのがばれて、勘当を言い渡されちゃったんだ。情けないし、申し訳ないし…。だから死ぬことにしたんだ」
「エッ!?」
紅梅は目を見張り、やがて涙をこぼし始めた。
「貴方が死ぬというのなら、いっそのこと私も一緒に…」
と、言うわけで…二人は心中の約束をした。喜んだのは伊之助だ。
実は、夕べ叔父さんとした『賭け』の内容が、『紅梅に自殺をすると告げ、どのような反応をするかを見る』という物だったのだ。
「もし、その紅梅とか言う女郎が、お前との心中を言い出したら、何が何でも二人を夫婦にしてやる」…叔父さんはそう言っていた。
ルンルン気分の伊之助と、とんでもない事になり内心驚いている紅梅は、手に手をとって大川の身投げの名所・吾妻橋へとやって来る。
「如何しましょう…。そうだ!」
もともと死ぬ気のなかった紅梅は、闇に姿が隠れたのを幸いに、手近にあった大きな石を川へと放り込んだ。
「伊之さん、私は先に行きます! 南無阿弥陀仏!!」
ヒューッ…ドボン!
「フワーッ!? 本当に飛び込んじまった。如何しよう、俺はまだ死にたくないし…」
オロオロとする伊之助の目に、足元の大きな石が飛び込んできた。
「許せ、紅梅よ。俺は無尽が当たったばかり、まだ死にたくはないんだ。俺かあの世へ行くまで、この石で我慢をしておくれ。南無阿弥陀仏!」
ヒューッ…ドボン!
「あの馬鹿、本当に飛び込んじゃったわ。音を聞けば、石か人か解りそうなものなのに。やれやれ…」
いくら相手が色男とはいえ、歌舞伎もどきに心中することになっては堪らない。そう思いながら、紅梅はすたすたと帰っていった。
「参ったな…。こんな筈じゃなかったのに…ハクション!! お茶屋に羽織を忘れてきちゃったよ。取りに行こ」
両方がそろそろっと、寒さに震えながら戻ってくると、廓のドまん前でバッタリ…。
「あ!? お前…紅梅!!」
「あらぁ、伊之さん。お久しぶり♪」
「この野郎!! 心中するとか言って…、何が『お久しぶり』だ…?」
「だって…娑婆で会ったばかりじゃないか」

「辰巳」と「辻占」

・辰巳
本来は方角をさす言葉だが、『三ドラ煩悩』を極めた奴がこの単語を使うと、深川にあった岡場所(幕府非公認の遊郭)の事になってしまう。
深川は江戸の辰巳の方角(東南)にあたるので、こう呼ばれていたのだ。
承応2年(1653年)に富岡門前町が開かれて以来、「七場所」と称する深川遊郭が発展した。
・辻占
元々の辻占は、夕方に辻(交叉点)に立って、通りすがりの人々が話す言葉の内容を元に占うもの。
ここに登場するのは「辻占菓子」という物で、煎餅や饅頭などの中に、恋占いのおみくじを入れた遊里の茶屋などのサービス品。

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