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三遊亭圓窓(六代目) 鬼の涙

      2014/05/15

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節分の夜、女房のお福は金を借りに歩いたが、駄目で、ほうぼうの家々で蒔いた豆を拾いながら帰宅。
亭主の舛造も金策に歩いたがままならず。
やはり豆を拾って帰ってきた。
そこで「もっと、豆を拾い集めて食料にしよう」と、舛蔵は出かけるが、すぐ、赤ん坊を拾って戻ってくる。
子供のない夫婦にとって、神様の恵みかもしれぬと、お福も大喜び。
しかし、嬉しそうにキャッキャと笑う赤ん坊だが、顔と言わず、手足と言わず、体まで異様に赤い。
それに、頭には小さな角があった。
「鬼の赤ん坊だ」
「どうする」
「見せ物に出そう」
「可哀そうだよ」

夫婦で話し合っていると、戸を叩く音。
とりあえず、人に知れてはまずいと、赤ん坊を押し入れに隠して、戸を開ける。
と、立っているのは鬼の夫婦。
名を鬼吉、お牙という。
「親子三人で江戸見物。豆をぶつけられて、逃げるとき、女房が赤ん坊を落としてしまいました。捜してましたら確か、こちらから赤ん坊の声が…」
亭主は「知らぬ」と突っぱねる。
空っとぼけて「今頃はどこかで見せ物になっていることだろう」とも言う。
すると、鬼の親は「赤ん坊が見せ物になっていたとしたら、あたし達も見せ物になって、赤ん坊のそばで暮らします」と、悲しく言う。
そして、鬼は語り始めた。
「鬼には先祖からの言い伝えがあります。
大昔、人と鬼は仲良く暮らしていたんです。
人には智恵と夢があり、鬼には力と勇気がありました。
天下を取った人間が、弱い人をいじめるようになりました。
それに立ち向かったのが鬼なんです。
天下人は「鬼は人間の敵だ」と絶叫しはじめたんです。
鬼は追われ追われて、島へ逃げました…
人間はそこを鬼が島と名付けたんです…
でも、われわれ鬼は人間を恨みませんでした。
大昔のように、仲良くしたいと願い、話し合いに節分にやってくるんですが、相変わらず豆をぶつけるだけで、話を聞こうともしてくれません…。
今日、こうして人と話をしたのは、生まれてはじめてなんです…」
舛造夫婦は、この鬼の親子の情に負けて、赤ん坊を返してやる。
鬼の夫婦はわが子(お角)を抱きしめ、大泣きに泣く。
鬼の目から溢れた涙は、土間いっぱいになり、ついには、下駄まで浮かしてしまうほどの量になってしまった。
こいつは大変と、亭主が鬼の夫婦の耳元でなにやら言うと、鬼は急にゲラゲラ笑い出し、涙も止まり、そのまま笑いながら帰っていった。
やっと、土間の涙も引き、一安心。
女房が亭主に訊いた。

「おまえさん。鬼になにを言ったんだい?」

「なぁに、来年の話さ」

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