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桂枝雀 親子茶屋(夜桜)

      2014/05/18

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親子茶屋(おやこぢゃや)は古典落語の演目の一つ。
上方落語の演目である。『滑稽噺』の一つで、落語によく出てくる【道楽者の若旦那】が主人公…とみせて、その裏には実に皮肉なテーマが内包されている。原話は、明和4年(1767年)の笑話本『友達ばなし』中の一遍である『中の町(ちょう)』。

主な演者としては4代目桂米團治や3代目桂米朝がいる。
特に3代目桂春団治の口演は有名であり、踊りの素養のある同師の美麗な高座は一つの芸術品と評価されている。
江戸落語では8代目桂文治が演じていたが、現在ではほとんど演じ手がない。

▼あらすじ▼
親旦那が道楽息子にお説教。
「そこにいるのは倅やないか。こっち入んなはれ。座布団あてなはれ。遠慮せんでよろし。遠慮はずい分、外でしくされ!」

「おはようさんで。」息子は反省の色もなく舐めてかかっている。
「何抜かす。それは朝早よう合うた時のあいさつじゃ。ホンマに何時やと思てんねん。もうかれこれ昼じゃ。」

「いや。朝が早いから言うたんやおまへんねん。へえ。いつもわてに小言言いなさるのはお昼頂いてからでおまんねん。せやけど、今日はいつもより早いなあ思もて、ま、おはようさんと言うた訳で。しかしまあ。一日は一遍、もう無くてはならんもんでやっさかいに、早よ初めて早よ済ました方が、お互い、気遣いないもんでおます。もう、ぼちぼちお始めになったら。」

「そら、何という言い草じゃ。……・わしじゃとて、毎日同じようなことばかり言いたいもんか。言いとないもんか。」
だが息子は平気なもので「へへ。わたいも同じこと聞きたいもんか。聞きとないもんか。」とやり返す。

「そら、こなたが言わすのじゃ。」
「あんたが言いなはるんです。」
「こなたという人は」
「あんたという人は。」
「掛けあいじゃがな。……・」

親旦那はこれではアカンと、「そんなら聞くが、こなた毎日金持って遊びに行ってなさるがな。芸者ちゅう女子と親とどちらが大事じゃ。」と息子を問い詰めるが、息子も一筋縄ではいかない。
「はあ。……お父っあん。あんさん、ぼけなさったなあ。……・そうでっしゃないか。芸者と親がどっちが大事かやなんて。……あほらしい……そんなこと話になりまへん。」
「さ。それを聞かんならんようにしたのは誰がしたのじゃ!やはり親が大事じゃろ。」
「いいえな。女子です。」

親旦那は呆れかえってしまう。
さらに息子「その訳言いまひょか。女子やったらよろしいで、わてが勘当となっても『若旦那、あてがなんとかします。』わてが置き手拭もんであいつが三味線弾いて、人さんの軒下立って、チチチチチン。て歌で流して稼いで東京行く。柳橋か芳町で芸者なって稼いでくれま。そのあと年季明けたら生涯仲良く暮らす。それに比べてお父っあん。あんたどないだす。うちが火事になって全財産丸焼け。年寄り抱えてどないします。人さんの軒下で歌うにも、あんた三味線も弾けしまへん。ど不器用なお人や。火の番の太鼓一つよう叩けん。ま、こんな親持ったのも身の因果と諦めて、あんた背たろうて、行く先々から金貰ろてでんな。うまいこと東京行っても、あんたみたいなもん、柳橋や芳町どころか高津の黒焼屋も断られるわ。三文の値打もない老いぼれと水も垂れるような女子と比べるのが、頭から秤にも天秤にも……」とさんざん親父を愚弄する。

ついに親旦那の怒り爆発「勘当じゃ!出ていけ!」
「おお。出ていかでかい!」
そこへ番頭が仲裁に入り、親旦那は気分直しにお寺に法談を聞きに行けばと勧められ「番頭どん。よう言うてくだされた。頼みにするは阿弥陀さまばかりじゃ。どれ、ありがたいお話を聞いてきましょ。」と数珠を片手に表に出る。

ところが、この親旦那、息子以上の遊び好き。数珠を懐に放り込んで難波新地の遊郭に一目散。

「ああ、いつ来ても賑やかなもんじゃ。あるかないかわからん地獄極楽をあてにするよりかは、これがこの世の極楽じゃ。……せやけどあいつが使うわしが使う。これではうちの身代もたまったもんやない。いっそ、あのどら息子先に死んでしまいやがったらええのに、風邪一つ引きくさらん。やれやれ、たった一人の息子見送ろと思うと、たいていのこっちゃないわい。」

ぶつぶつぼやきながらお茶屋に上がりこんで芸者や幇間を揚げての宴会を始める。
酔い心地の親旦那は「ほたらいつものやつやろか。」

「旦那さん、いつものてなんや。」
「あの狐釣り。」
「姉ちゃん。狐釣てなに。」
「扇で目隠しして『釣ろよ』『釣ろよ』言いながら鬼ごとの真似みたいなことするねん。」
「いややの。あて、そんな古臭い遊び。」と芸者には不評なのだが、親旦那そんなことも知らず、
「さ、やろか。ア、やっつく、やっつく、やっつくな。」
「釣ろよ。釣ろよ。信太の森の狐どんを釣ろよ。」と三味線太鼓を鳴らしてどんちゃん騒ぎとなる。

一方の若旦那。反省するどころか番頭をだまして逃げ出し、飛ぶように難波新地へ来る。「ああ、ええもんやなあ。……ここ来たら、親父の意見なんかどこかぽんとへ行ってまうから、おもろいな。」と言いながら「狐釣り」の遊びに目をとめる。

「あれ。珍しい遊びやってるなあ。……狐釣りや。ははあん。あれが客やな。あの頭の禿げ具合はうちの親父とえろう変わらんで。 粋なもんやなあ。家の親父に見習わせたいわ。ちいとは爪の垢でも煎じて飲みやがったらえねん。……お。この店知ってるで、前、田中と一遍来たことあるわ。……寄ってみたろ。」

感心した若旦那は、一つその隠居に一緒に遊ばせてくれるよう頼んでくれと提案。女将が話を通すと先方も乗り気だ。では「親狐」「子狐」で遊ぶことにして、後でご対面と話がまとまる。

「さ、小狐あげまっせえ。一イ、二ウ、の三イ! さ、釣ろよ。釣ろよ。信太の森の子狐どんを釣ろよ。」「あ、ヤッツク、ヤッツク、ヤッツクな。」

こうして親子は互いに何も知らないまま、「釣ろよ。釣ろよ。」と目隠しして散々遊び倒す。
疲れ果てた親父が「……ウ。ゴホン。ゴホン。……ちょ、ちょっと待っとくんなされ。いやあ、年取るとちょっと騒ぐと息切れしてどもならん。……一休みじゃ。これはこれはハイ、どこの御方とは存じませんが、こんな年寄りの古臭い遊び気に入って下されて一座してやろうとおっしゃる。……ありがとうございます。以後、これを御縁に、これからも一つお心安う。」とここで双方扇を取って見れば、何と親子同士。

双方目が点となり、しばし呆然。

「あ……お父っつぁん」
「倅!?……必ず博打をしてはいかんぞ」

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