立川談志/田能久(たのきゅう)
阿波の国、徳島の在に田能村、ここにお百姓の久兵衛さんと言う、この方が誠に親孝行で、一人のおっかさんを大事にいたします。この人は道楽がありまして、芝居をいたします。
ところが大変に上手いので、おいおい弟子も増えまして、田能村の久兵衛ですから、田能久(たのきゅう)一座てぇものをこしら、あちらこちらと頼まれて行きます。
と、伊予の宇和島と言う所から、頼みにまいりました。宇和島へ乗り込んで、ちょうど四日目の日に、国から手紙が来て、おっかさんが大病で、すぐに帰ってもらいたいと言う。
親孝行な人ですから、後々の事は弟子に頼んで、自分の大事にいたしますカツラを三つ四つ、つづらに入れまして、これを風呂敷で結わいて、これから国へ帰ろうと言う。
途中に保坂峠と言う峠へかかろうとする、雨がバラバラ降り出して、杣(そま=きこり)の人が下りて来て。『この山は、夜、無事に越えた者はねぇ。』と親切に言われたが、おっかさんの病気が気にかかるので、いそいでここを越えてしまおうと、だんだん山へ登って来る。
雨はひどくなりまして、頂上へ来た時には、盆を返した様。見回すと、杣の連中が建てた掘立小屋がある。その中へ入り込んで、たき火をして濡れた物を乾かしている内に眠気を催して来たので、そばにあったムシロを被って、ぐっすりと寝込む。
ふと目を覚ますと、歳は八十以上にもなろうかと言う、お爺さんがこっちをにらんでいる。気味が悪いので寝たふりをしていると……
[出典:3分で読める!「落語に見るオモシロ江戸風俗」:http://archives.mag2.com/0000107654/20160816182000000.html]
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