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古今亭志ん生(五代目)佃祭

      2017/08/25

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佃祭(つくだまつり)は、落語の演目の一つ。
住吉神社の夏の祭礼で賑わう佃島を舞台に、「情けは人の為ならず」という諺をテーマとした江戸落語である。

主な演者は五代目古今亭志ん生三代目三遊亭金馬である。
志ん生は長屋の騒動を強調して喜劇調に演じていたのに対し、金馬は笑いを控え目にして人情話を重点的に演じるという違いがあり、現在もこれら2通りの演出で行われている。

あらすじ

神田・お玉ヶ池で小間物問屋を営む次郎兵衛は、夏の佃島で開かれる祭りを楽しみにしていた。
その当日、妻から「祭りが紅白粉付けて待ってるんでしょ?」などとヤキモチを焼かれながらも
「暮れ六ツ(現在の18時頃)の終い船(渡し船の最終便)に乗って、今日中には必ず帰る」と言って出掛ける。

佃島に着いた次郎兵衛は祭りを存分に楽しんで、気が付くともう暮れ六ツ。
急いで船着場に行き、乗客でいっぱいの終い船に乗ろうとすると、突然見知らぬ女に袖を引かれる。
行こうとする次郎兵衛と引き留めようとする女、お互い揉めているうちに終い船は出発してしまう。

船に乗り損ねてがっかりする次郎兵衛に対し、女曰く
「3年前、奉公先の金を失くして途方に暮れた末に吾妻橋から身を投げようとしていたところ、見知らぬ旦那様から5両のお金を恵まれまして、おかげで命が助かりました。何とかお礼をしたくずっと探し回っておりましたところ、ようやくここでお会いすることができましたので、夢中で引き留めてしまいました」

「ああ、そう言えばそんな事もあったな…。でも、今日中に帰らなければうちの女房がうるさくて……」

「夫が漁師をやっておりますので、帰りの船はいつでも出せます。是非我が家へどうぞ」

いつでも帰れると聞いてようやく安心した次郎兵衛、女の家へ招かれてお酒や佃煮など魚料理をご馳走になっていると、やがて外がにわかに騒がしくなる。
聞けば、先ほどの終い船が客の乗せすぎで沈没し、乗客が全員溺れ死んでしまったとの事。
次郎兵衛はこれに仰天。
もし3年前に彼女を助けていなければ、そのままあの船に乗って死んでいただろう……と、自分を引き留めてくれた女に感謝する。
一方、次郎兵衛の自宅では終い船沈没事故の話が伝わって大騒ぎ。

妻と近所の長屋の連中は次郎兵衛が死んだと勘違いし、遺体の確認をする前から葬式の準備を進め、一同お悔やみの後にお坊さんを呼んで仮通夜を営んでいると、何も知らない当の次郎兵衛が戻ってきたものだから
「ヒィーッ!ゆ、幽霊!?」
と、一同腰を抜かしてしまう。
でも、次郎兵衛が事情を説明すると誤解が解けて一安心。

最早出番の無くなったお坊さんも「これぞ因果応報。次郎兵衛さんはかつて女の命を救った為、それが今、自らの命を救う形で戻って来たのです…」と長屋の連中に説いて回った。

皆が次郎兵衛の無事を喜んでいる中、ただ一人与太郎だけは「身投げをしようとしている女に5両あげれば自分の命が助かる」と思い込んでしまい、家財道具を売り払って5両の金を工面し、毎日橋の上や川沿いで見張っていると…或る日、袂に何か重そうなものを詰めた女が涙をためながら川へ向かって手を合わせているのが見えた。

与太郎、これぞ身投げだと大喜びで女を捕まえて、
「これこれ身投げはよしなさい、5両あげるから」

「身投げじゃないよ!あたしゃ歯が痛くて戸隠様にお願いしていたんだ」

「だって、袂にたくさんの石が…」

「これは、お供え物の梨だよ!」

原型

モデルとなった話は、中国明代の説話集『輟耕録』の中にある「飛雲渡」である。
占い師より寿命を三十年と宣告された青年が身投げの女を救ったおかげで船の転覆事故で死ぬ運命を免れる話で、落語「ちきり伊勢屋」との類似点もある。
その後、南町奉行の根岸鎮衛(ねぎし やすもり 1737~1815)が著書「耳嚢」巻六に「陰徳危難を遁れし事」の題名で、飛雲渡を翻案した物を掲載した。
こちらは「ある武士が身投げの女を助け、後日渡し場でその女に再会して引き留められたおかげで転覆事故から逃れる」という内容で、より現在の形に近くなっている。
なお、舞台となった佃の渡しでも実際に沈没事故が起きている。1769年(明和六年)旧暦3月4日に藤棚見物客を満載した渡し船が転覆・沈没し、乗客三十余名が溺死した。
奉行所は生き残った船頭に対して遠島、佃の町名主に押込を命じ、町役にも相応の罰が課される事となった。

戸隠信仰と梨

九頭竜大神を祀る戸隠神社(長野県長野市戸隠所在)では、歯を患った者が3年間梨を絶って参拝すると平癒するという言い伝えがあり、戯作家・十返舎一九も著作『戸隠善光寺往来』に於いて
「九頭龍権現は岩窟内におられるという。梨を神供とする。虫歯を患う者は、梨を断ってお祈りすると必ずなおる」
と記している。
このように戸隠神社は歯の神様として人気があり、歯痛に悩む江戸の人々は平癒祈願をする際、梨の実に自分の氏名や歯の痛む場所などを書いてから神社のある戸隠山の方を向いて祈り、その後実を川へ流す風習を行っていた。
本作のサゲは以上の風習を基にしたものであるが、現代では知っている人がほとんど居ないため、あらかじめ枕で戸隠信仰と梨の関係を説明する必要があり、口演時間の関係上で次郎兵衛が帰宅した所で打ち切る場合が多い。

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