【落語チャンネル】ネット寄席

落語動画・音声まとめデータベース/世界に誇る日本の伝統芸能 落語ワールドをご堪能下さい

*

林家彦六(八代目 林家正蔵)指切り

   

Sponsored Link

『者(しゃ)』のつく職業は大変です。学者、医者、易者、役者、芸者、噺家は者が付きません……

芸者は酒が入りますので大変です。青色の酔客(悪酔いしている)、赤ら顔の酔客(気持ち良く酔っている)、シラフの客の三人がいても一人で手玉に取ります。

青色の酔客が猪口を芸者に投げてよこします。自分が酔ってしまったんでは仕事にならないので、盃洗に開けて、猪口を返します。ですから、花柳界のドブに住んでいるボウフラはいつも酔っています。

杯を返すときも先ず、シラフの人の膝に手を置いて、青い顔の人に渡そうとすると「そんな杯は欲しくない」と駄々をこねますので、視線を外さず赤い顔の客に「想い差し」といって渡します。

三人とも気持ち良く、「杯は俺の所に収まった」、と思うし青い顔の人は「流し目で俺のところを見ているよ」と自惚れますが、シラフの客人は「俺の膝に手が乗ってるよ」
で三人とも殺されてしまいます。芸者はかように大変な職業です。

「信次郎、今聞いていると馴染んだ芸者に、恋仲だと思って多額の援助をしていたが裏切られた、と言う。それは良いが、『その芸者を一突きに刺し殺して、自分も死ぬ』と言うのは賛成できない。私も元武士だったから分かるが、明治の時代になって、それはダメだ。浅草寺に行くと多くの額が奉納されていて、その中に趙襄子(ちょうじょうし)と予譲(よじょう)の額が掛かっている」。

その額の話は、
昔、予譲(よじょう)は、晋(しん)国の智伯(ちはく)という人の家来であった。
その晋国の智伯が趙襄子(ちょうじょうし)に戦で敗れ殺され、その主人の仇を討とうとして捕らえられた。

が、趙襄子はそのまま許してくれた。あきらめずに今度は顔に漆(ウルシ)を塗って炭を飲み、人相を変え物乞いに化けて橋の下で趙襄子を狙った。そこに仇の趙襄子が乗った馬がピタリと動かなくなり、何か異変があるのだろうと検索すると。

変装していた予譲が捕まった。『この前、命を助けてやったのに、なぜ何度もわしを狙う。元々おまえの主人は范(はん)氏で、それが智伯に滅ぼされた時に捕虜になって随身したもの。とすれば、わしはおまえの元主人の仇を討ってやったも同じではないか』と責めると、『ごもっともだが、智伯は私を引き立ててくれ一群の旗頭にしてくれました。

で、恩があります。士はおのれを知る者のために死す、と申します』と悪びれずに言ったので、趙襄子は感心して『おまえの志にめでて討たれてやりたいが、今わしが死んでは世の中が乱れる。三年待て。

これをわしと思って、ぞんぶんにうらみを晴らせ』と自分の着物の片袖を与えた。予譲が剣でそれを貫く。突いたところから血がタラタラ。人の一心はスゴイものだと感心した。結局、予譲は自害したが、ああ、人の執念は恐ろしいものと趙襄子は衝撃を受け、3年も経たないうちに死んだ、という。

「お前も、商売人だ。そんな女のために死ぬくらいなら、予譲のように、その女からもらったものを突くなり、切るなりしてうっぷんを晴らすがいい。何か貰った物があるだろう」

「何も貰っていません」

「だらしない色男だね。何かありそうなものだが……」

「ハイ、写真があります」

「それで復讐をすれば良いじゃ無いか」

「良く分かりました。伯父さんが言うように、この写真で復讐します」

半紙にグルグル巻きに大切にしていた写真を取り出す。

「この写真の女はイイ女でしょ」

「そんなのは関係ない」

「この写真を突く物を貸してください」

「お前なぁ……、おいとま乞いに来たんだろう。これから女の所に行って、刺し殺そうというのに切れ物も持っていないのか?」

「ハイ」

「これは鎧通しと言って、先祖伝来のものだ。短く小刀のように切り詰めてあるが切れるよ」

「ヤイ、小照、伯父さんの話の晋の予譲になぞらえて、写真によって成敗してくれる。エイ!」

「一心だ。写真から血が出たよ」

「指を切ったんです」

[出典:https://rakugonobutai.web.fc2.com/119yubikiri/yubikiri.html]

Sponsored Link

 - 林家彦六(八代目 林家正蔵) ,

[PR]

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

林家彦六(八代目 林家正蔵)生きている小平次

江戸木挽町の山村座から奥州路に旅興行に出ましたが、その中に小役者の小幡小平次(こ …

林家彦六(八代目 林家正蔵)菊模様皿山奇談(弐)~楼門の場

かつて将軍家から拝領した菊模様の三十枚の皿、この皿を割った者は指を切るとの遺言が …

林家彦六(八代目 林家正蔵) めだか

高知の須崎の港、廻船問屋の大黒屋満七は大変人がよく仏の満さん呼ばれていた。子供が …

林家彦六(八代目 林家正蔵)怪談累草紙(かさねぞうし)~親不知の場

二代目三遊亭圓生作、通称“古累(ふるがさね)”と称する「累草紙-親不知の場」の一 …

林家彦六(八代目 林家正蔵)一眼国

あらすじ 昔は本所辺りを向両国といい回向院を中心に見世物小屋が並んで賑わっていた …

【リレー落語】三遊亭圓生~林家正蔵【真景累ヶ淵】
■林家彦六(八代目 林家正蔵) 五月雨坊主

神田・橋本町に願人坊主が多く住んでいた。 文政6年、江戸も爛熟していたが、五月雨 …

■林家彦六(八代目 林家正蔵) 戸田の渡し(お紺殺し)
■林家彦六(八代目 林家正蔵)五人廻し
林家彦六(八代目 林家正蔵)耳無し芳一(耳なし芳一)

原作;耳無芳一の話(ラフカディオ・ハーン) THE STORY OF MIMI- …