■桂枝雀(二代目)幽霊の辻
2019/03/08
幽霊の辻(ゆうれんのつじ)は、上方落語の演目の一つ。
落語作家の小佐田定雄が1977年に2代目桂枝雀のために書き下ろした新作落語。
小佐田とって処女作であり落語作家になるきっかけになった演目。
あらすじ
山向こうの『堀越村』というところまで手紙を届けくれと頼まれた主人公。
中腹まで登ってきたところで暗くなってしまい、急に心細くなった彼は近くにあった茶店で休息しつつ、出てきたお婆さんに堀越村までの道のりを訪ねてみた。
「へぇへぇ、まず《水子池》というのがあります」
飢餓の時期、生活に困った女たちが産んだ赤ちゃんを捨てたことからその名がついたという。
今でも、橋の上を通るたびに赤子の泣き声がするのだとか…。
「万が一子供がのぞきこむと、友達欲しさにずるずるっと…引っ張りこむんです。…そのさきには」
そんな感じで、村へと続く道は幽霊のオンパレードなんだとか。主人公は震え上がってしまった。
「幽霊の辻…それを超えれば村やな? あれ、おばあさん?」
言うだけ言って、おばあさんは店へ引っ込んでしまった。
「うわぁ…水子池…何もない…獄門地蔵…なにもない!!」
震えながら、ものすごいスピードで山道をかけていく。もうすぐ村だ…というところで、若い娘と鉢合わせした。
「何や、ド阿保!!」
場所が…自殺した女の幽霊が出るという《首くくりの松》のすぐそばだったせいで主人公は気絶しそうになってしまう。
「幽霊やと思ったやないか!?」
「…幽霊やないと思ったの?」
女の姿が、すっと消えた。
概要
闇に対する人間の恐怖感を皮肉った内容……と思わせておき、最後に本物の幽霊を登場させて一気に客席を氷つかせてしまう巧妙な作りの話。
現在でも、『心霊スポット』にまつわるドタバタは続いており、作者の観察眼の高さをうかがい知ることができる。
ちなみに、主人公が手紙を届けに行く《堀越村》は「お玉牛」の舞台となっている村。
また、柳家権太楼もこのネタを江戸ですることがあるのだが、こちらでは最後の幽霊の女に会った後も続き、大騒ぎして逃げていると「お客さん、お化け屋敷の出口はあちらですよ」と係員に言われて、お化け屋敷の噺であったことが判明して終わるというサゲが用いられている。
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